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大学概要

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学長メッセージ

Message from the President

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学位記授与式

平成30年度 学位記授与式 餞の言葉

 本日お元気に学位記授与式を迎えられましたことに、心よりの祝意を表します。

 さて本学で正式には卒業式と言わず学位記授与式とすることには理由があります。今から半世紀前の本学草創期に学長だった林竹二先生のご教示によるものです。林学長の時代に、宮教大独自の強固な基礎が多く築かれました。入試改革、教育実習改革、全国初の合同研究室設置、表現力の重視、ゼミナールの充実・・・そして先生は「本学では卒業という語は使わない。教師は生涯学び続けなければならない」とおっしゃいました。すなわち、大学で必要な単位をそろえ免許を取得したことのみで「教えることの資格をすべて備えた」と思うのは誤りであり、常に研鑽を積み、より深い自己省察を重ね、生涯努力を重ね、学び続けることを忘れてはならないという意味で、卒業ではないということであります。本学の長い歴史の中で大切にしてきた深い教育理念を端的に表すものです。そして林学長はこうも言われました。「新しく大学を出たばかりの教師が、自分は教師だから教える資格があるのだというような、思い上がった気持ちを持たないようにだけはしておかなければならない」厳しい示唆ではありますが、教育の奥深さと限りない重みに思いを致すとき納得できるものであり、またそれゆえ高みに向かって歩み続ける、とてもやりがいのある仕事と言えるのではないでしょうか。

 林竹二先生については、昨年「林先生に学ぶ」という講座が学生企画で行われましたが、先生についてご存じない方も多いかと思うので、本学の歴史として少しお話しいたします。

 1960年代から全国に、東大を頂点とした大学紛争の嵐が吹き荒れました。これは大学の過度の管理に対し学生が反発し、講義棟を封鎖しバリケードを築くなど実力行使に出たもので、本学も同様の事態となり、授業など一切が機能不全に陥りました。その頃の学長が林先生で、哲学者であり、本学史上傑出した学長でした。紛争を鎮めるため、ほとんどの大学が警察の機動隊を導入し、本学にも警察から打診がありましたが、林学長は「大学に警察権力を入れるのは教育の破壊である」と言って断りました。そして「学生と話して来ます」と言い、単身でバリケードの中に夜、入って行かれたそうです。先生には持病がありましたので、周りの教員がとても心配する中、夜が白々(しらじら)と明けるころ戻ってこられ「駄目でした。明日もう一度行きます」とおっしゃったそうです。このように学生とひざ詰めで真摯に向き合い、徹底的に議論し、また低次元の妥協をしなかったため、他大学では学生が教員に「お前たちはそう言うが」と言ったのに対し、本学では「先生方はそうおっしゃいますけれども」と言ったという逸話が残っています。1969年、学長声明の中でこう言われています。「すべての学生諸君、この出発したばかりの大学を真に創造的に発展させる道を、今というこの時点で探求してほしい。教育の場にふさわしい解決をしよう。それが本学の真に生きる道ではないだろうか。」学生と共に歩むこの姿勢こそが、混とんとした中で確かに築かれた本学の最も重要な礎(いしずえ)であり、未来に向かっても変わらないものであります。

 東日本大震災より8年が経過しました。私は今月11日に東京で行われた「東日本大震災8周年追悼式」に出席いたしました。出席者一人一人が深い思いを抱いておられました。みなさんはこの8年をどのように過ごしましたか。何を見、何を聞き、何を考え、どのように行動しましたか。

 災害と共にあるのは、終わることの無い哀しみです。「時を経ても何も変わらない」・・・  追悼式の出席者がおっしゃっていました。そのような思いを多くの人々が今もなお抱え苦しんでいることを記憶してください。前に申し上げた林先生は「魂の世話」ということを論じられました。「多くの教師が子どもたちひとりひとりに目を向けることなしに、自分の授業の腕前だけを上げようとしている。授業の技術を問題にするよりも前に、教師は『子どもたちの魂の世話』に取り組むべきだ。」これは教育現場はもちろんですが、他の場においても当てはまる姿勢であると思われます。何年経っても変わらない、そしてこれからも続く哀しみ、苦しみの限りない深さを、私たちは片時も忘れてはならないのです。

 今年は改元の年で、平成の次の御代(みよ)を迎えます。現皇后陛下は、聖心女子大学時代、初代学長のマザー・エリザベス・ブリットより大きな影響を受けられたと聞き及んでおります。ブリット学長は、当時珍しく女性の自立を熱心に説いた方で「鍋かまを洗うだけの女性になってはいけない。いつも周りを照らす存在でありなさい」とおっしゃったそうです。この言葉をお借りし、申し上げます。男女を問わず、また教職に就く人も他の道に進む人も皆、自らが置かれた場において周りを照らす存在であってください。そして何かに迷ったときは、「自分はどう生きたいのか」という原点に立ち戻って、静かに考えてください。そうするとクリアに見えてくるはずです。皆さんの未来に大いなる幸(さち)あらんことを祈ります。
   
   平成31年3月26日


国立大学法人 宮城教育大学長 村松 隆



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